ネット右翼的な人の増加は産業構造の変化とも関係している?

 実家の地方の図書館でセブン‐イレブンの経営史―日本型情報企業への挑戦という本を最初のほうと最後のほうだけちょろちょろっとこの前読んだのですが、そこで書かれていることって、ようするに今後成長する産業形態はネット右翼みたいなやり方が重視される、ということであるように思えたんですね。
 1960年代後半から1970年代前半にかけて日本は著しい経済発展を遂げましたが、そのときにメインの市場としてあったのは「家庭市場」でした。つまり「一家に一台」の製品、家の車、家の食材、冷蔵庫、テレビ、マイホームと、「家庭」単位の消費がメインだったわけです。ところが、技術の変化→IT電商の活発化→情報、知識、サービスをベースにする製品や事業の拡大という流れが1990年代以降急速に出てきました。
 従来の産業形態は、大規模メーカーが生産段階で大量生産した製品をアピールして消費者のニーズをその製品に向けさせ、後は太く短いパイプを持って生産から消費段階に落とし込む、一般的には高圧的マーケティングと呼ばれるやり方によって「家庭市場」を標的にしていました。
 しかし1970年代以降、そのようなやり方は通用しなくなります。生活に必要なものがたいがい簡単に手に入れられるようになり、豊かになった消費者は次第に主体性の強い消費を行なうようになりました。こうなってくると企業は「個人市場」へとその標的を変えざるを得なくなります。「個人市場」を標的市場にした場合、所得階層のみを考えればいいだけの「家庭市場」とは比べ物にならないほどニーズが多様化・複雑化します(年齢、ライフスタイル、価値観など)。「個人市場」は強い個性を持ち、かつ流行に敏感で、多様であると同時に変化の速い市場でもあります。技術や市場の変化が急速なので、企業はすべての分野で他企業と競争するようなことができなくなり、結果として自分の得意な分野に集中し、その他の分野はアウトソーシングで流通させることになります。そうした形態を実現するためには、企業内で取引を統合するのではなく、他社とのネットワークを構築することが必要になります。ネットワーク内の企業は、法律的には独立していますが、情報を共有し、製品やサービスの流れを共同で管理します。そこではフレキシブルな生産と販売がベースで、ニーズの変化に応じて多様な製品やサービスの生産・販売量を調節すことが必要とされます。物流など、製品・サービスの流通は小ロットで頻繁になります。するとコスト・多様性・サービス速度という三つの要素をいかに解決するかが問題になってきますが、その中では企業はその規模ではなく、「情報」を統制することのできる企業がネットワークの中心を占めることになります。しかしあくまで重視されるのはネットワークであって、中心の企業がすべてをコントロールすることはできません。
 そこで優位に立ったのがコンビにです。コンビにはその名のとおり「便利さ」が売りです。具体的には、消費者がすぐ利用できる場所、迅速で親切、優れたマーチャンダイジング、長時間営業、必要な商品が必要な量だけ必要なときに品揃えされる。顧客のニーズに常に対応しなければならず、情報と物流のリアルタイムネットワークシステムで的確に販売戦略を組み立て、それに応じた商品を適切な量だけタイムリーに配置する、などがあります。
 さて、以上のことから、コンビニに象徴される新しい産業形態において、注目すべき企業の必要に迫れらた行動として以下の二点があげられます。

①個人市場をリアルタイムで正確に把握するための消費者の情報収集。
②他社とのネットワーク構築。

 こうした特徴はいったい何を意味するのか。興味深いのは『Voice』(平成十八年3月号)に載った本田由紀の文章です。

 周知のように、製造業における大量生産に牽引された戦後高度経済成長の結果、大半の家庭と個人に基本的な生活財はすでに行き渡り、それ以後の経済活動は、情報化・消費化・サービス化の方向に重心を移している。いまや生産と消費のフロンティアは、デザインや広告などの意匠、極限の便益を追求する技術、感情的・精神的な充足に関わる対人サービスなどの面で、新しい微細な付加価値を付随させた商品の開発に見出されるようになっている。そうした産業構造の変化のもとでは、労働者に要請される「能力」の中身も変化せざるをえない。
(中略)新たな消費需要を不断に掘りおこす必要性が高まった現段階では、独創性や創造性、ネットワーク形成力や交渉力、敏感なサービス精神などの「非標準的」で柔軟な「能力」が(中略)要請されはじめているのである。(中略)それは一部のエリート層だけに課されるものではなく、営業・販売や接客などを担う広範な労働者層にとってもまた逃れがたい要請なのである。(強調部引用者)

 つまり「空気」を読んでネットワークを上手に作れる奴が強いということですよね。*1。おっと、他にもいろいろな問題点が拾えるのですが、今日は時間がないので続きはまた。

*1:ところで、「空気」読む人=ネット右翼ぐらいまで僕のネット右翼定義が最近拡大しそうなんですが(笑)、ネットで「空気」読む人が、果たして生身の世界でも上手に空気を読んでネットワーク作れるんでしょうか? なんかほら、小林薫とおんなじ様な人とかもネット右翼にいるらしいですから。彼らは年代としては30代なので僕が想定するネット右翼よりはちょっと年上なんですけれどもね