「子供を守る」と「子供が怖い」は・・・ああ

こんなページを見つけました。
http://www.secu354.co.jp/intv/intv06022501.htm

子供を犯罪の被害者にも加害者にもしないために
子供たちを見守る83運動推進
 性犯罪など凶悪な犯罪から子供たちを守ることが急務となる一方で、犯罪に手を染める少年たちの問題も、背後に家庭の崩壊などがあり社会全体で取り組むべきテーマとなっている。「おやじ日本」の会長を自ら務められ、「83運動」を提唱している竹花豊警察庁生活安全局長に、「子供の安全」への取り組みを中心に話を伺った。(聞き手・三林和美本紙社長)

少年法改正の趣旨

――現在の少年法に対するお考えをお聞かせください。
竹花 ちょうど今国会で少年法改正の法案が提案される予定です。14歳未満の触法事案の警察の調査に関わる手続きの新しい規定、保護観察の実効性の確保、保護者に対する指導、助言に関わる規定が含まれています。
一つは、これまで罪を犯した非行少年に対する社会全体の取組みに弱点がありました。
少年を社会内で処遇して更生を図ろうとする保護観察制度が充分に機能することを少年法は求めていますが、実際には保護観察の処分となった少年達が保護司や保護観察所を半ばだましているような状況があり、現に保護観察中の少年が再び法を犯すことがしばしばあります。そういう保護観察制度のあり方について取り上げられています。
もう一つは保護観察中の子供の保護者は、裁判所の審判の趣旨に照らして、子供達を立ち直らせるために真剣な努力をすることが求められているが、実際にはそうではない保護者がいます。保護観察所がしっかりと意見を述べられるような仕組みが必要です。
その他、罪を犯した子供達のうち審判不開始となった者(審判にかからない者)が全体の半分以上を占め、審判に服するまでもなく更生が見込まれるという家裁の判断があったわけですが、その中に犯罪を繰り返す者が出ています。しかし審判不開始が一旦決まってしまうと、変えるのは難しいのです。
また審判にするかどうかを決定する前の段階で、更生のための様々な措置がとられた方がよいという少年達もたくさん居ますが、なかなか実際には行なえません。今の少年法の中身について、審判にかからない子供達への保護的な措置、立ち直り支援策といったものがもっと広範的に盛り込まれ、検討されるべきです。
もう一点、少年達の家庭が崩壊し、少年達が非行に走ってしまうことが往々にしてあります。そうした家庭の子供達を更生することが難しい状況のなかで、社会の宝である子供達にどう働きかけるか、新たな仕組みも検討されるべきです。親権が子供の更生を妨げていることすらあります。親の権利だから、自分の子に他人からとやかく言われたくないと言われます。親権をかざして自分の子供を育てきれない保護者に社会として何らかの働きかけができないか、これらの問題を少年法のあり方を含めて考え直していくべきです。

――少年法の14歳以上、14歳未満という年齢区分けも問題ですか。
竹花 14歳というのはひとつの歴史的なもので、それはそれでよいのですが、14歳未満の少年の犯した行為について解明することは、その子のためにも、また被害者のためにも必要で、社会的要求があると思います。この点で矛盾をさらけ出したのは山形での中学生マット圧死事件で、13歳と14歳が混在していたわけで、そのために状況の解明に大きな壁となりました。少なくとも重大な犯罪に関しては解明できるように考えていくべきだと思います。

子供への性犯罪抑止

――性犯罪で子供が犠牲になる事件が多いのですが、事件の重さにくらべて刑罰が軽いように思います。この手の犯罪に対する整備が出来ているのでしょうか。
竹花 広島、栃木の事件、その前の奈良の事件などについては裁判所が充分考えて判断していると思います。ただ、奈良の事件の加害者が前にも事件を起こしていたことで、その処分が軽すぎはしなかったか、あるいはその後何も対策をしていないのではないか、という意見には耳を貸さなければと思います。彼等が再び事件を犯す可能性が高い中で、社会として彼等をどう更生させていくかという取組みが今まで以上に大切ですが、何ができるかは難しい問題です。私達は法務省と連携をとり、暴力的性犯罪者の出所者についての情報を交換し、許される範囲内で対応をすすめています。たとえばICチップを出所者に付けるといった案など新しい視点での議論が始まったばかりですので、国民の支持を得て踏み込んだ検討をしています。

――犯罪者にチップが付けられないのなら、子供達一人一人にチップを付けるとか…。
竹花 それは必ずしも犯罪抑止につながらないのですよ。奈良の事件を見ると、子供に対する性的欲求が高まって押さえきれない、子供の側が多少の対応ができても抑止力にはならない。犯罪としては幼稚な犯罪なので、犯したら大変だ、必ず捕まる、と知らしめる必要があります。抑止力の方法としては、犯罪者と子供との対決ではなく、まわりの社会と犯罪者との闘いにしないと防ぎようがない。子供を守るためのパトロールなどの活動が各地で広がっています。また、刑罰の強化もそうですし、性的欲求をいたずらに刺激するような情報への対処などいろいろな取組みがさまざまな角度から検討されています。

「おやじ日本」と「83運動」

――「おやじ日本」の運動が展開されていますが、非行少年などについては、子供が怖いということもあります。子供と付き合う、対処するノウハウを大人に教えるのも必要なのではありませんか。
竹花 いろんなことが大切で、お父さん達も立ち上がってパトロールする、おばあさんもやっています。犯人が現れて闘うということではなくて、子供達を見守るということです。私が会長をやっています「おやじ日本」で提唱して全国に広げようという「83運動」があります。8時、3時の子供の登下校時の時間帯に地域の人達は子供の登下校の道を通って買い物をしたり、犬の散歩をして、自分の子、他人の子を見守ろう、また登下校に限らず公園で遊んでいる子供達も大人が見守る運動です。子供達にも大人の姿が見えます。「子供に目をかける」ということをもっとやっていくことで、犯人にとっては地域の意思が分るわけで、それが地域の力を高めます。「83」を表わす腕章なども作っています。

――PTAに行ったら問題児の肝心の父親が来ていないということも聞きます。
竹花 お父さんは出不精だし、誘われないと行かない。そういうお父さんが学校に集まれるような仕組みが非常に大切ですね。

――子供の誕生日には早く会社を出て帰宅するとか…。
竹花 会社は土曜、日曜はお父さんをちゃんと休ませてやって子供と遊ぶ時間を与えて欲しいですね。企業がお父さんの力を借りて、企業に入ってもしっかりやっていける次代の子供を育てること、それは企業にとっても大事です。

――お母さんだけでなくお父さんもですね。
竹花 お父さんは社会経験があるのでお母さんとは違う面があります。父母が両方の立場で子供のつぶやきを聞いてあげるというのはすごく大事です。非行少年を見ていると、いじめられた、なぐられたと両親に言えないですね。何かあったら言え、では言えない。お父さんは子供と長い時間遊び、その中で子供の声を聞くことです。

ケータイ、ゲームの問題

竹花 それから、ケータイ、ゲーム、メール、インターネットについていろいろ指摘されています。中身の有害性はともかく、それにのめり込んでいる子供が多く、食事より大事にするくらいで人間関係が希薄になっています。親までゲームに夢中になって会話のない家庭がでてくる。これは真剣に考えなければならない問題です。

――ニートなど話をするのが苦手な人が増えていますね。
竹花 ひきこもりの原因とまでは言えませんが、人間関係の構築ができず、また人の痛み、暖かさが分らない。両親と遊ぶよりこっちの方が面白いということになると問題が厄介です。そうであればあるほど親は子供と遊ぶことが大切で、今のままでは将来が心配ですね。

――米英では学校や地域で、例えば、爆発物を学校に持ち込めば、即退学とか、犯したものはきちっと処罰するという、「ゼロトレランスポリシー」を定めているところが多いと聞きましたが、日本ではいかがですか。一線を引くのが難しいようですが。
竹花 一律に基準を設けるのは難しいと思います。
たとえば万引きについて社会がどう対処するかですが、〈いや、出来心だよ〉〈大人への第一歩だ〉と許してしまうと、それが犯罪に対する甘い考えを子供に起こさせてしまいます。人の物を盗る、人を傷つける、名誉を害することは許されないことをきっちり教え込まねばなりません。
その結果どう処置するかは工夫しなければならず、警察が捕まえればよいだけのものではありません。大人社会では、まあまあ、なあなあでは許されないことをはっきり教えるべきです。小さなことでも事情を聞いて、そのまま許せるものもあれば、きちっとした処置が必要なものもあります。いつも子供に甘い態度であれば社会人として子供が成長せず、子供が可哀相です。大人と子供、親と子の境目、節度が失われている状況がしばしば生じています。

――死についても、死んだ者が生き返ると信じている子供が多いそうですが。
竹花 死を実感できない。ゲームで何度も殺人をしてそれに抵抗を感じないという怖さがあります。同級生を殺した長崎での事件もそれを感じます。
また、性的な犯罪はゲームやビデオに触発されます。宮崎勤の幼女殺人事件はビデオ漬けの生活からで、幼女を殺すことに抵抗感が少なかったと言われています。それ以降こういった状況は拡大されています。そういうビデオに傾倒している者が少数派でなくなりました。電気街の秋葉原では、成人向けビデオやゲームに沢山の人が群がっていて、恐ろしくなります。

――規制はできないのでしょうか。
竹花 表現の自由の問題があって、なかなか規制が難しい。業界として、社会全体としても規制を検討すべきだという流れになってきていますが、さらに実態の調査が必要だと思います。

性能表示に期待

――防犯設備士の活躍が期待されているのですが、防犯性能の高い住宅部品などは高くて売れないという声も聞かれます。
竹花 売れ始めると安くなるのですがね。既存の住宅に付け替えるまでにはなっていませんが、今年4月から国土交通省が住宅設備の防犯性能の表示をしますので、この動きが期待されます。防犯性能を高めるために、ガラス、鍵など一つでも良いものつけようと考えるきっかけになります。
――ワンドア、ツーロックと言いますが、女性が鍵を二つ持つのは重いという意見があり、安全だからダサくても仕方がないという考えがあるように思います。
竹花 ひったくり防止のネットがありますが、もっとお洒落なデザインを考えたらどうかと思います。これからのセキュリティの方向ですね。

――最後に警察庁として文科省に望まれることがあるでしょうか。
竹花 それは学校現場で子供を非行に走らせないための対策がどれだけ出来ているのか、先生達を鼓舞して徹底的に行なってほしい。また、ゲームのバーチャルな世界への対処をどう教えるかです。ゲームに傾倒しないで、自然に親しむ大切さや親が汗して働く姿をみせるということが大事だと思います。その地域が求めているものを、すべての先生が真剣に考えてほしいと思います。

――本日はありがとうございました。



(2006年2月25日号より)

なんというか、これでも、ネットでよく見かける「犯罪者は殺せ!」とかいう意見よりはいくらかまともに見えてしまうということにちょっとなあ、と思った。
あ、でも内藤朝雄さんが言ってるみたいに投影同一化になってる分もっとたちが悪いかもしれない。